私傷病でやむを得ず休職となってしまう場合がありますが、メンタルヘルス等を理由に休職期間が長期化する場合もあると思います。
その期間内に復職できれば良いのですが、残念ながらその期間内で復職できない場合には、退職となることも定められているのではないかと思います。
社員側は退職となっては大変と、治癒して復職できると主張し、会社側は安全配慮義務等からまだ治癒していないので復職できないと考え、意見が合わずトラブルになることがあり得ます。
原則として、治癒した状態とは、休職前の職務に通常の業務を行える状態となった場合です。
しかし、現実的には労務提供が可能で軽度の職務に就くことができる程度の状態であれば、治癒した状態と認められることが多いと思います。会社の規模や社内事情も影響すると思いますので、とても難しい判断になると思います。
例えば、社員側が主治医の復職可能の診断書を提出、それを受けて会社は必要に応じて会社の状況を知る産業医の意見を聴き、産業医が復職可能と診断した場合、最終的に会社が許可する、ようなルールはどうでしょうか?
数年前ですがマクドナルドで「名ばかり店長」ということが話題になったのを覚えていらっしゃるでしょうか?マクドナルドの店長が、その呼称では管理職扱いですが、管理職と言える状態ではなく、残業手当の支払いが命じられたものでした。
労働基準法では、管理監督者は労働時間に関して適用除外とされ(労基法第41条)その結果、残業手当の支払いが不要となります。(注意:管理監督者でも深夜手当については対象となります)
それでは、管理職とはどの様な基準で判断されるのでしょうか?
それは、就業規則等で決まるのではなく、以下の基準で業務状態等の実態で判断されます。
労働条件の決定、その他の労務管理について経営者と一体的な立場にあるか
自らの労働時間が就業規則等で制限を受けるのではなく、自らの意で行うことができる状態か
その地位にふさわしい管理職手当・役職手当等の特別手当の支給がされているか
退職金を支給するかどうかは使用者が定めることができますが、就業規則等で退職金の支給条件や基準が明確に定められれている場合、退職金も賃金の後払い的性格のものとなり、減額や不支給の取扱いには以下がポイントとなります。
ポイント①「就業規則等に、同業他社へ転職した者に対して退職金を減額や不支給にする旨の条項があるか?」
就業規則等に同業他社に転職した者に退職金を減額や不支給にする旨の条項がない場合は、原則、減額や不支給はできません。
特殊な場合としては、権利濫用に該当する場合です。
参考判例:営業部長職にあった者が、会社の顧客データを同業他社へ提供し、その後会社の顧客データの一部を消去して、業務妨害罪で有罪判決を受けたような場合に退職金請求が権利濫用に該当するとされた。(H12.12)
ポイント②「就業規則等に減額や不支給とする旨を規定することは問題なし。」
後払い的賃金だとすれば、逆に減額や不支給にしてよいのかが気になると思いますが、前にも記載しましたが、退職金を支給するかどうかは使用者の定めるところです。
従って、退職金が賃金にあたるとしても、同業他社転職者に減額又は不支給の条項を就業規則等に定めることは問題ありません。
ポイント③「就業規則等に定められていても常に減額や不支給が認められる訳ではない。」
退職金を減額又は不支給とすることは、間接的に憲法で保障される労働者の職業選択の自由を制限することになります。ですので、判例でも在任中の功労を抹消してしまうほどの著しい背信性があった場合に限り、退職金の減額や不支給が認められています。
色々な事情で労働条件を下げる必要がある場合があると思います。処遇を下げることを「不利益変更」といいます。
「労働契約法」で労働条件を下げる必要がある場合のルールが規定されています。まず、基本的には「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更して労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。」とされています。
但し、以下の場合に変更後の就業規則に定めるところによるとすることができます。
・変更後(低下)の就業規則を労働者に周知させ
かつ、
・労働者が変更で受ける不利益の程度
・変更の必要性
・変更後の内容の相当性
・組合等との交渉の状況
その他の事情に照らして合理的なものであるとき変更が可能になります。
尚、労働基準法で「労働基準法の基準を理由に労働条件を低下させてはならない。」とされていますので、労基法の基準を理由に処遇を下げることはできません。
また、法的効力として、法律>労働協約>就業規則>労働契約の順となっていますので、例えば、就業規則の基準に達しない労働契約があってもその達しない部分は無効となり、就業規則で定める基準となります。
就業規則は、経営者の意思を反映させたものであるべきです。
但し、コンプアライアンスを実現し会社を守るための内容も盛り込む必要があると思います。
・作成基準
従業員が常時10名以上(パート・アルバイト含)の事業所に作成義務があります。
・絶対的記載事項
・相対的記載事項
・手続き
作成後に従業員代表の意見徴収→労働基準監督署への届出→従業員への周知
・効力
法令>労働協約>就業規則>個別労働契約
従業員の過半数で組織する労働組合または労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者です。
会社として就業規則の作成や労使協定の締結の際に意見を聴いたり同意を得る相手となります。
対象は、管理監督者以外の者で選出方法は、選挙や挙手で構いません。